LITTLE WING(1990年 リンドバーグ)

 

「だってさーー。努力の姿が見えなくない? 」
お客さんが落ち着いた夜間、喫茶店のカウンター内から元気な声が聞こえる。

「ふふっ……そうですね」
微笑みを浮かべた彼女は、カウンター越しで洗い終わったスプーンを拭きながら、耳を傾けている。

「そんな風に、考えたコト無かったです。やっぱり本田さんは面白いですねーー」
そう言って彼女は、テーブルの片付けに向かった。

ここは新潟県のショッピングモールの1F、フードコートの片隅に在る喫茶店、ひまわり。

朝はモーニングサービス、昼はランチ。午後からティータイム、夜は癒やしの空間。地元で人気の喫茶店。

彼女は、ひまわりで働く、鈴木さつきさん。笑顔が似合うチャーミングな女子大生。身長は150センチくらいで、かわいらしいって言葉がぴったりだと思う。

実際に新潟でアイドル募集の時、僕は推したほどだ。現役女子大生アイドル、人気が出ると思うのだけどなぁ……。

本人が全く興味が無かったのだ。

大学1年生の時から始めたバイト。地元でもレベルの高い大学なので、もっと効率の良いバイトも在るのに、ココでバイト。
もう大学4年生、卒業なんですね。

僕は、本田陽太(ほんだひなた)28歳。4年前から新潟に移住している。

昼間は、技術系の現場仕事。夜は週2・3回、喫茶ひまわりでアルバイトをしている。
全く別世界の仕事を行うことにより、刺激的な毎日が送れているのかな?

ギャンブルの様なリスクが無くて収入を得る。最高じゃない? 別に借金がある訳じゃない。

学生時代から生活費を稼ぐ為に、バイトの掛け持ちは当たり前。
結局、大学は中退してしまったけど、バイト仲間の繋がりや体験は、何よりも得難い経験だった。未だに学生気分が抜けないのも事実だけどね。

「本田さん、ちょっといいですか?」
レジから鈴木さんの呼ぶ声。
お客さんを待たせているから、何か分からない事があったのかな?

「この割引券って使えるんですか?」
お客さんから受け取った割引券は、僕も始めて見るものだった。

「鈴木さんは、後からのお客様の対応をお願いします」

「分かりました。お待たせしました、伝票をお預かり致します」
鈴木さんは、後ろに並んでいるお客さんの会計に回った。

僕が対応を変わる。

「大変お待たせ致しまして、申し訳ございません。ちょっと割引券を見せて頂きますね」

年配のお客様が不安そうな表情を浮かべて、辺りをキョロキョロと見渡している。
「僕も初めて見る割引券なので、一緒に考えましょうか?」

割引券の記載を見ると、ショッピングモールの専門店で発行された割引券で、割引対象がショッピングモールのみだという事が分かった。
ただし、飲食店街は対象外。

飲食店街は対象外なので、店舗連絡も無かったのだろう。

「お待たせして大変申し訳ございません。この割引券を見ると、専門店専用ですね。申し訳ございませんが、当店では使えないですね」

「そうなの?ありがとう。お手数をお掛けしましたね」
お客様は申し訳無さそうに答える。

「いえいえ、私の方こそ勉強になりました。ありがとうございました」

お客さんは、支払いを終えて笑顔で帰っていった。

「本田さんお手数お掛けしました」

「いえいえ、僕は一緒になって答えを探しただけです。僕も初めて見た割引券だったよ。やっぱりショッピングモールの専門店もいろいろ考えているんだね」

「私は突然のトラブル弱いですね。本田さんが居てよかったです」

「うーん、だてに年齢を重ねてないからね」
あんまり不安そうな顔をするので、笑い話で終わらせたかった。そんな空気を察したのか、笑顔でホールに戻っていった。

喫茶ひまわり
ショッピングモールの中に入っているので、初めてのお客様も多い。思ってもみない事も時々。

そんな不確定要素の多いことも、魅力の1つ。
僕は変わっているのだろうかな?

「ノーゲストです!(お客さんが0です)」
鈴木さんのチャーミングな声が、キッチンに響き渡る。

「お疲れ様です!」
さぁ、閉店作業をして帰りましょうか。閉店作業の雑談も好きな時間。

今日も1日お疲れ様でした。

〜☆〜☆〜☆〜

余談&筆者つぶやき

LITTLE WING
作詞 渡瀬マキ
作曲 川添 智久

〜マッチ売りの少女に出逢ったら、僕はどんなふうに話しかけるのだろう。〜

【何故⁉︎マッチ売りの少女がNG‼︎】

彼らのお話。僕が表現したいコトが書けるか?

伝えられるか?

やっと?夢が見つかったような自分です(遅っ)。
お付き合い下さいませ。